【お役立ちコラム】建築会社がSDGsに取り組む理由。想定されるメリットとリスク。
【目次】
・さまざまな企業によるSDGs情報発信が一般的になっているから
5.建築会社が「SDGsに取り組まない」ことによっておこるリスク
1.SDGsとは
SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で「持続可能な開発目標」という意味になります。
SDGsは、2015年9月にニューヨークの国連本部で採択された世界共通の目標です。
2016年~2030年の15年の間で達成すべき17の大きなゴールに加えて、169の具体的なターゲットで構成されています。
17のゴールの内容は、健康や教育、働きがい、経済成長、エネルギー、気候変動など、多岐にわたっていますが、採択されて8年が経過したのでみなさん一度は聞いたことがあるような内容ではないでしょうか?
この記事では、「建築会社がSDGsに取り組む」理由や、取り組むことによって得られるメリットについて説明していきます。
2.企業が「SDGsに取り組む」理由
・さまざまな企業によるSDGs情報発信が一般的になっているから
SDGsが日本国内において広く認知されるにしたがって、さまざまな企業がSDGsまたはサステナビリティについて、情報発信を行うようになりました。
理由はいくつかありますが、その一つとして、2022年の東証市場の再編とプライム市場上場企業は有価証券報告書へのTCFD提言に沿った開示が実質的に義務化されたことが大きいと思います。
(スタンダード市場・グロース市場については任意となります)
TCFDとは、Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略で、「気候に関連した財務情報を開示するためのタスクフォース」になります。
すごくざっくりと誤解を恐れずに言うと、気候変動による温暖化対策への自社の取り組みの費用対効果を有価証券報告書にも掲載して、だれでもWebサイトから閲覧できるように義務付けられたということになります。
上場企業の多くが会社の取り組みとして、自社のwebサイトやPRサイトを通じて情報発信することで、それに追随して中小企業の情報発信が増えてきた印象があります。
そうした企業のサプライチェーンにあたる会社は当然ですが、「環境」や「働きかた」に対して感度の高い企業なども当然含まれています。
SDGsの認知率について、株式会社電通が行った第6回「SDGsに関する生活者調査」が分かりやすいため引用します。
この調査は、毎年全国10~70代の男女計1,400名に対して実施されているものです。
【図表2】では、SDGsの認知率を時系列でみることができます。
ついに、今回2023年の調査で日本国内における「SDGs」という言葉の認知率が9割を超えました!
この調査は毎年行われており、他にも世代別や男女別の認知率、認知経路、グローバルな視点からの日本のSDGsに対するコメントなど大変参考になります。

【出展】電通 第6回「SDGsに関する生活者調査」を実施
【図表1】SDGsの認知率、【図表2】SDGsの認知率(時系列:2018年~2023年)
企業だけでなく、個人やボランティアの方々も社会貢献活動を通じてSDGsについて情報発信をしたり、活動を行っています。
個人やボランティアの方々の活動もSDGsの目標達成には欠かせられないものですが、企業の取り組みは規模も大きく、発信もスピーディに行うことができます。
つまり、社会に与える影響がより大きいことが特徴です。
社会が抱えている問題を、企業ならより早く解決できる可能性を秘めています。
例えを挙げると、創エネをつくりだす“太陽光発電”。
個人の住宅の屋根にソーラーパネルを設置することも大事な取り組みですが、企業だと自社の工場やカーポートなどの使っていない屋上に、ソーラーパネルを設置して大量の創エネを生みだすことも可能になります。
洋上風力発電や、バイオマス発電など、企業レベルでないと取りくめない事業も挙げると枚挙にイトマがなくなります。
このような事例から、企業のSDGsに対する取り組みの情報発信はこれからも引き続き求められていくと考えられます。
3.建築会社が「SDGsに取り組む」理由
結論から言うと、建築会社の取り組みはSDGsのゴールに繋がりがあるものが多いからです。
建築業界は、生活の基盤となる「衣・食・住」の中でも、「住」の部分を担って住まいづくり、街づくり、交通、インフラ、環境、エネルギーなど人々の暮らしに密接した業界です。
建築会社の取り組みを見てみると、SDGsのあらゆる局面に関与していることが分ります。
その取り組みを、いくつかピックアップすると
- 地域社会への貢献
- 循環型社会への取り組み
- 環境負荷を低減した低炭素・省エネ建築
- 再生可能エネルギーの利用
- エコフレンドリーな材料の仕様
- 持続可能なインフラ整備
など、SDGsのゴールと合致する項目が挙げられます。
これらのひとつひとつについては、深堀していくと非常に興味深く膨大なページを割くことになるので、また別の機会にテーマとして取り上げたいと思います。
上記からも、建築業界はSDGsのゴールを複数、または同時に実現できる業界ということがよく分かります。
4.建築会社が「SDGsに取り組む」メリット
ひと昔前までは「価格が安くて大量に購入できるもの」が最重要視されていました。
今でもそのような動向はあります(わたしもよく100円均一や3coinsなどで購入しています)が、ここ最近では「購入するなら環境に配慮した商品」、「購入は必要最小限の量だけ」「長く使い続けられるもの」と購入する側の意識も変化してきています。
ここでも、株式会社電通が行った第6回「SDGsに関する生活者調査」から引用します。
企業がSDGsに取り組むことに対して、「その企業の良い印象が強くなる」と回答した人が、企業に積極的に推進してほしいテーマとして挙げた上位3つは以下の順番になります。
- 食品ロス
- 再生可能エネルギー
- 気候変動対策
「食品ロス」は、廃棄物を出さずに必要な分だけといった、モノの供給に対する意識が表れており、資源の有効活用にもつながってきます。
「再生可能エネルギー」や「気候変動対策」への取り組みは、まさに建築会社が取り組むべきテーマになります。

【出展】電通 第6回「SDGsに関する生活者調査」を実施
【図表9】企業がSDGsに取り組むことの影響

【出展】電通 第6回「SDGsに関する生活者調査」を実施
【図表10】「その企業の良い印象が強くなる」と回答した人が、企業に積極的に推進してほしいテーマ
このように、建築会社がSDGsに取り組むことは、自社のレピュテーション(評判)を向上することができ、消費者からの信頼獲得に繋がります。
仕事を依頼するなら、社会的に信頼できる会社を選びますよね?
以前の投資家は、企業の業績や財務状況で投資先を判断していました。
ところが、ここ最近では環境問題や地域社会への貢献、従業員への配慮、そして法に順守した企業経営が行われているかといった点から企業の将来性を分析して投資を行っています。
こういった投資は「ESG投資」と呼ばれていて、世界的にも増加傾向にあります。
(EGSは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字をとったものになります)
ESG投資は海外で先行してきましたが、国内においてもESGを考慮する投資家は増加しています。
その中でも不動産投資家は、コストだけでなく建築スペックの高い「環境不動産」により着眼しています。
SDGsに取り組んでいる企業は投資家からも選ばれやすくなり、資金が安定するため、新規事業への展開もしやすくなります。
SDGsについての情報発信を積極的に行うことは、より投資家への信頼につなげることができます。
働き方にも変化があります。
現在は、給料・待遇だけではなく、社会貢献度が高い企業で働きたいという学生も増えてきています。
SDGsに取り組んでいる企業は、社会的役割を担っている、将来性があるといった印象を与えることができます。
最近の学生にとっては、SDGsを「自分ごと」化しています。
というのは、2020年度は小学校、中学校の教科書に、2021年度からは高校の教科書にもSDGsが取り上げられるようになりました。
これから就職活動をおこなう学生の皆さんは、SDGsが社会的常識となりつつあるので、知らないでは済まされなくなってきているのが実情です。
また、働き盛りであるミレニアル世代と呼ばれる28歳~42歳くらいの方々は、デジタルネイティブ世代でもあり、ネットを介してSDGsや環境問題についての知見や情報を多く得ています。
いくつかの企業から採用をもらいそれらの企業の中から選択する際に、より社会貢献度が高い企業を選ぶ可能性はおのずと高まります。
SDGsへの取り組みを行っている事業に関わることができることで、モチベーションを高めることができる社員もこれから増えていくことが想像できます。
5.建築会社が「SDGsに取り組まない」ことによっておこるリスク
SDGsに取り組まないと、上記に記載したメリットが受けられないことが企業の生存戦略にダイレクトにつながります。
さらに、少子高齢化社会の影響を受けて、労働者人口の減少、後継者の不在などは建築業界にとって深刻な問題となっています。
そのような中、来年4月に控えた「建築業界の2024年問題」も頭を悩ますネタとなります。
他産業と比較してもダントツに長時間労働が常態化している労働環境の課題に「時間外労働の規制」が課せられることになりました。
SDGsに取り組むことは、このような状況の中でも生存していくためのひとつの手段といっても過言ではないと思います。
6.SDGsに取り組む建築会社の事例
こちらは弊社の事例を紹介させていただきます。
弊社「デバイス」は、ガラス全般の建築に関わる会社になります。
地球温暖化がもたらす影響に対して、その危機感から2005年より「CO2排出量削減を目標にしたプロジェクト(D-Project)」を実施するなど、脱炭素社会の実現を企業理念として掲げています。
ここ近年は、特に「オフィスビルの環境負荷低減」に貢献する「グリーンフロア事業」に注力しています。
その成果といっては何ですが、弊社の製品を導入した物件(事業主:野村不動産マスターファンド投資法人)が、大阪府による『令和4年度 おおさか気候変動対策賞』において《優秀賞》を受賞しました。
そんな「デバイス」の行っているSDGsの取り組み内容を、下記にご紹介します。
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・自社ビル(本社)において実証実験としてダブルスキンを導入し、空調使用電力量 約78%削減を達成しています。 ・太陽光発電による再生自然エネルギーの創出も行っています。 |
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・社会、顧客、当社従業員、そのほかのステークホルダー、それぞれの視点から良い会社であると評価されるために働きやすい職場環境づくりに努めています。 |
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・脱炭素社会の実現に向けて、これまで培ってきた技術力に日々磨きをかけて新たなテクノロジーを創出します。 ・環境にやさしい技術や生産方法を多く取り入れ、省資源化された製品を提供していきます。 |
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・快適な空間づくりに貢献することで、持続可能なまちづくりを進めていきます。 |
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・環境負荷抑制のためには、その製品を設計する側も利用する側も双方に責任が求められます。 ・ガラスという半永久的な素材を用いて、建物の長寿命化を促進することでGHG(温室効果ガス)排出の削減に貢献します。 |
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・地球温暖化がもたらす気候変動に対して、CO2を大幅に削減するビジネスモデルを展開しています。 |
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・顧客、協力業者さま、当社従業員をはじめ関わる全ての人たちとパートナーシップを結び、環境対策に向けて全力で取り組んでまいります。 ・野心的な目標値を設定して、企業・大学・研究機関との共同研究も展開しています。 |
上場している大企業やスーパーゼネコンといわれる会社と異なり、弊社のような中小規模の建築会社は大体近しい「SDGsのゴール」が当てはまるのではないでしょうか?
弊社もそうでしたが自社の取り組みを見直してみると、意外に「SDGsのゴール」に合致することにも気付くことができます。
まだ、SDGsの取り組みを発信していないのであれば、これを機会にぜひ自社での取り組みについての情報発信を試みてはどうでしょうか?
7.まとめ
- さまざまな企業がSDGsに取り組むことは、現在では一般的になりつつあります。
- 建築会社が自社のWebサイトなどでSDGsについて情報発信をすることは、「仕事を受注する」「担い手不足の中の採用」といったことへのアプローチにもなります。
- 建築会社にとっては、SDGsに取り組むこと自体が会社の生存戦略にダイレクトに繋がってきます。
以上、ご紹介した情報発信の重要性とメリットを自社のSDGsの取り組みに役立てていただけると幸いです。